Pythonのポリモーフィズムとは?オーバーライドとオーバーロードの違いを初心者向けに解説
生徒
「先生、ポリモーフィズムってなんですか?名前がむずかしくて覚えられません…」
先生
「ポリモーフィズムは日本語で言うと『多態性』のことです。同じ名前のメソッドでも、クラスごとにちがう動きをさせられるしくみです。」
生徒
「同じ名前なのに、動きがちがうんですか?なんだか不思議ですね!」
先生
「そうですね、たとえば“走る”という言葉でも、人・動物・ロボットで走り方がちがうのと同じです。では詳しく見ていきましょう!」
1. ポリモーフィズム(多態性)とは?初心者が知るべき基本概念
Python(パイソン)のオブジェクト指向プログラミングを学ぶ上で、避けて通れないのが「ポリモーフィズム(polymorphism)」です。日本語では「多態性(たたいせい)」や「多様性」と訳されます。
一言でいうと、ポリモーフィズムとは「同じ名前のメソッド(命令)を呼び出しても、相手(オブジェクト)によって自動的に動きが変わるしくみ」のことです。プログラミング未経験の方でも、以下の日常的なイメージで考えると分かりやすくなります。
音楽アプリでも、YouTubeのような動画アプリでも、押すボタンは同じ「再生」アイコンですよね。しかし、音楽アプリなら「音」が流れ、動画アプリなら「映像と音」が流れます。使う側は「再生」という一つの操作を知っているだけで、対象に合わせて最適な動きをしてくれる――これがポリモーフィズムの真髄です。
Pythonのコードで、もう少し具体的に見てみましょう。たとえば「スマートフォン」と「パソコン」という異なるクラスがあり、どちらにも「起動する」という同じ名前のメソッドを作ります。
class Smartphone:
def power_on(self):
print("画面をタップしてロックを解除します。")
class PC:
def power_on(self):
print("電源ボタンを押してパスワードを入力します。")
# どちらも「power_on」という同じ名前で命令できる
devices = [Smartphone(), PC()]
for device in devices:
device.power_on()
このプログラムでは、リストの中身がスマートフォンなのかPCなのかを細かく意識しなくても、一律にpower_on()と命令するだけで、それぞれの機器に応じた正しい動作が実行されます。このように、呼び出し方を共通化することで、コードをシンプルに保ち、将来新しい機器(タブレットなど)が増えても修正が楽になるという大きなメリットがあるのです。
2. メソッドのオーバーライドとは?
オーバーライド(Override)とは、「親クラスで定義されたメソッドを、子クラスで上書きして使うこと」です。これにより、ポリモーフィズムが実現されます。
class Animal:
def speak(self):
print("なにかが鳴いています")
class Dog(Animal):
def speak(self):
print("ワンワン")
class Cat(Animal):
def speak(self):
print("ニャーニャー")
animals = [Dog(), Cat()]
for a in animals:
a.speak()
ワンワン
ニャーニャー
このように、親クラスのspeakメソッドを、子クラスで上書き(オーバーライド)して、それぞれの鳴き声を出しています。これがポリモーフィズムです。
3. オーバーロードとの違いとは?
オーバーロード(Overload)とは、「同じ名前のメソッドで、引数の数や型(かたち)を変えて、複数のバージョンを定義すること」です。
ただし、Pythonではオーバーロードはサポートされていません。Pythonでは、関数名が同じであっても、あとから定義されたものが上書きされます。
def greet():
print("こんにちは")
def greet(name):
print(f"こんにちは、{name}さん")
greet()
TypeError: greet() missing 1 required positional argument: 'name'
このように、最初に書いたgreet()は上書きされて消えてしまいます。
4. オーバーロードを実現するには?
Pythonでオーバーロード風の動きをさせたい場合は、*argsやNoneなどを使って、引数の数によって処理を分ける方法があります。
def greet(name=None):
if name:
print(f"こんにちは、{name}さん")
else:
print("こんにちは")
greet()
greet("さくら")
こんにちは
こんにちは、さくらさん
このようにnameに値があるかどうかで、あいさつの文を変えています。
5. ポリモーフィズムのメリットとは?
ポリモーフィズムには、以下のようなメリットがあります:
- 共通のインターフェースで扱えるため、コードがシンプルになる
- 拡張しやすく、新しいクラスを追加しても既存コードを変更しなくてよい
- 現実世界の「多様性」に近い考え方ができる
6. ポリモーフィズムを身近な例でたとえてみよう
ポリモーフィズムは、たとえば「リモコンのボタンを押す」と考えてみましょう。
テレビ、エアコン、照明、それぞれの「電源」ボタンは同じ見た目ですが、押したときの動きはそれぞれちがいます。テレビは画面がつき、エアコンは風が出て、照明は光ります。
つまり「同じ操作(メソッド名)で、ちがう動き(中身)」になるのがポリモーフィズムです。
7. 抽象クラスとポリモーフィズムの関係
ポリモーフィズムを活かすために、「抽象クラス(ちゅうしょうクラス)」を使うこともあります。抽象クラスとは、「中身が決まっていないけど、こういうメソッドはあるよ」という約束だけ決めるクラスです。
Pythonではabcモジュールを使って抽象クラスを定義できます。
from abc import ABC, abstractmethod
class Animal(ABC):
@abstractmethod
def speak(self):
pass
このように書くと、speakを実装しないと使えないクラスになります。これは「設計ミス」を防ぐのに役立ちます。
8. まとめると?
ポリモーフィズムはオブジェクト指向プログラミングの中でもとても重要な概念です。「同じメソッド名で中身を変える」しくみによって、柔軟で拡張性のあるコードが書けるようになります。
Pythonではオーバーライドによってポリモーフィズムを実現し、オーバーロードは明示的にはサポートされていませんが、工夫すれば似たような動きも可能です。